接円錐曲線

ユークリッド幾何学において、接円錐曲線は外接円錐曲線(がいせつえんすいきょくせん、:Circumconic)と内接円錐曲線(ないせつえんんすいきょくせん、英:inconic)のことである。それぞれ、三角形の3つの頂点を通る円錐曲線 、3つの辺(またはその延長線上)に接する円錐曲線を指す。それぞれ外接2次曲線、内接2次曲線ともいう。

ABC について BAC を単に Aとかく。B,Cも同様である。また辺について a = | B C | , b = | C A | , c = | A B | {\displaystyle a=|BC|,b=|CA|,c=|AB|} とする。

三線座標 X = x : y : z {\displaystyle X=x:y:z} において、外接円錐曲線はu : v : wを用いて以下の様に表すことができる。

u y z + v z x + w x y = 0 , {\displaystyle uyz+vzx+wxy=0,}

外接円錐曲線上の点X等角共役点が成す直線は以下のように書ける。

u x + v y + w z = 0. {\displaystyle ux+vy+wz=0.}

ABC外接円と、この直線が、0,1,2点で交わっているとき、 その外接円錐曲線の形はそれぞれ楕円放物線双曲線となる。

ABC の内接円錐曲線は以下の様に表すことができる。

u 2 x 2 + v 2 y 2 + w 2 z 2 2 v w y z 2 w u z x 2 u v x y = 0. {\displaystyle u^{2}x^{2}+v^{2}y^{2}+w^{2}z^{2}-2vwyz-2wuzx-2uvxy=0.}

中心と接線

外接円錐曲線

外接円錐曲線の中心は

u ( a u + b v + c w ) : v ( a u b v + c w ) : w ( a u + b v c w ) . {\displaystyle u(-au+bv+cw):v(au-bv+cw):w(au+bv-cw).}

である。外接円錐曲線が垂心を通る場合、九点円上に位置する[1]

A, B, C での接線はそれぞれ以下の式となる。

w v + v z = 0 , u z + w x = 0 , v x + u y = 0. {\displaystyle {\begin{aligned}wv+vz&=0,\\uz+wx&=0,\\vx+uy&=0.\end{aligned}}}

内接円錐曲線

内接円錐曲線の中心は以下の式で与えられる。

c v + b w : a w + c u : b u + a v . {\displaystyle cv+bw:aw+cu:bu+av.}

各辺との接点は(0:w:v),(w:0:u),(v:u:0)である。

他の性質

外接円錐曲線

  • ABCの頂点でない外接円と、外接円錐曲線の交点の三線座標は以下の式で与えられる。
( c x a z ) ( a y b x ) : ( a y b x ) ( b z c y ) : ( b z c y ) ( c x a z ) {\displaystyle (cx-az)(ay-bx):(ay-bx)(bz-cy):(bz-cy)(cx-az)}
  • P = p : q : r {\displaystyle P=p:q:r} が外接円錐曲線上にあるとき,その外接円錐曲線のPを通る接線は以下の式で表される。
( v r + w q ) x + ( w p + u r ) y + ( u q + v p ) z = 0. {\displaystyle (vr+wq)x+(wp+ur)y+(uq+vp)z=0.}
  • 外接円錐曲線が放物線であることと、以下の式が成立することは同値である[2]
u 2 a 2 + v 2 b 2 + w 2 c 2 2 v w b c 2 w u c a 2 u v a b = 0 , {\displaystyle u^{2}a^{2}+v^{2}b^{2}+w^{2}c^{2}-2vwbc-2wuca-2uvab=0,}
双曲線であることは以下の式が成立することと同値である。
u cos A + v cos B + w cos C = 0. {\displaystyle u\cos A+v\cos B+w\cos C=0.}
  • 楕円に内接する三角形のうち、最も面積が大きいものの重心は楕円の中心と一致する[3]。逆に三角形に外接する楕円のうち、最も面積の大きいものの中心は三角形の重心と一致し、その楕円はシュタイナーの外接楕円である。

内接円錐曲線

  • 内接円錐曲線が放物線であることと、以下の式が成立することは同値である。
u b c + v c a + w a b = 0 , {\displaystyle ubc+vca+wab=0,}
このとき、三角形の辺との接点のうち、1つは三角形の辺上にあり、他2つは辺の延長線上で接する。また、ブリアンション点(後述)はシュタイナー外接楕円上にある。
  • 2点をそれぞれ p 1 : q 1 : r 1 , p 2 : q 2 : r 2 {\displaystyle p_{1}:q_{1}:r_{1},p_{2}:q_{2}:r_{2}} とする。また、
X = ( p 1 + p 2 t ) : ( q 1 + q 2 t ) : ( r 1 + r 2 t ) . {\displaystyle X=(p_{1}+p_{2}t):(q_{1}+q_{2}t):(r_{1}+r_{2}t).}
t実数として、上式で表される点 X の軌跡は直線である。
X 2 = ( p 1 + p 2 t ) 2 : ( q 1 + q 2 t ) 2 : ( r 1 + r 2 t ) 2 . {\displaystyle X^{2}=(p_{1}+p_{2}t)^{2}:(q_{1}+q_{2}t)^{2}:(r_{1}+r_{2}t)^{2}.}
上式の点 X2 の軌跡は下の式で表される楕円を成す。
L 4 x 2 + M 4 y 2 + N 4 z 2 2 M 2 N 2 y z 2 N 2 L 2 z x 2 L 2 M 2 x y = 0 , {\displaystyle L^{4}x^{2}+M^{4}y^{2}+N^{4}z^{2}-2M^{2}N^{2}yz-2N^{2}L^{2}zx-2L^{2}M^{2}xy=0,}
ただし、
L = q 1 r 2 r 1 q 2 , M = r 1 p 2 p 1 r 2 , N = p 1 q 2 q 1 p 2 . {\displaystyle {\begin{aligned}L&=q_{1}r_{2}-r_{1}q_{2},\\M&=r_{1}p_{2}-p_{1}r_{2},\\N&=p_{1}q_{2}-q_{1}p_{2}.\end{aligned}}}
  • 内接円錐曲線が楕円(内接楕円)であることは、その中心が中点三角形の内側にあることと同値である[3]:p.139。 また、中点三角形の内側にある点に対して、その点を中心とする楕円の内接円錐曲線は一意である[3]:p.142
  • 楕円の内接円錐曲線のうち、最も面積の大きいのはシュタイナーの内接楕円で各辺と中点で接する。シュタイナーの内接楕円の中心は重心である[3]:p.145。一般に楕円の内接円錐曲線の面積と三角形の面積の比について、楕円の中心の絶対重心座標(α, β, γ) とし、以下の式が成り立つ[3]:p.143
Area of inellipse Area of triangle = π ( 1 2 α ) ( 1 2 β ) ( 1 2 γ ) , {\displaystyle {\frac {\text{Area of inellipse}}{\text{Area of triangle}}}=\pi {\sqrt {(1-2\alpha )(1-2\beta )(1-2\gamma )}},}
相加相乗平均の不等式より α = β = γ = ⅓すなわち楕円の中心が重心であるとき、面積が最大であることがわかる。

四角形への一般化

四角形のすべての辺に接する楕円の中心は、その四角形の対角線の中点を結ぶ線分上にある[3]:p.136

Polar triangle

任意の円錐曲線に対し、頂点の極線の成す三角形をpolar triangleと言う[6]。polar triangleと基準三角形は配景(英語版)的である(Chasles's Polar Triangle Theorem)[3]:p.148[7]

三角形幾何学(ドイツ語版)では、内接円錐曲線のpolar triangleと基準三角形の配景の中心はブリアンション点と呼ばれる[8]。ブリアンション点の三線座標は(1/u:1/v:1/w)である。また接円錐曲線のpolar triangleと基準三角形の配景の中心を総じて核心(Kernel)という[2]

内接円錐曲線での例

外接円錐曲線での例

他の円錐曲線での例

  • 極円のpolar triangleは元の三角形

関連

出典

  1. ^ 齋藤 輝. “等角共役とシムソン線の幾何学”. 角川ドワンゴ学園 N/S 高等学校研究部. 2024年4月28日閲覧。
  2. ^ a b 一松信,畔柳和生『重心座標による幾何学』現代数学社、9/12、52,62頁。 
  3. ^ a b c d e f g Chakerian, G. D. "A Distorted View of Geometry." Ch. 7 in Mathematical Plums (R. Honsberger, editor). Washington, DC: Mathematical Association of America, 1979.
  4. ^ “ENCYCLOPEDIA OF TRIANGLE CENTERS X(115)”. faculty.evansville.edu. 2024年3月26日閲覧。
  5. ^ “ENCYCLOPEDIA OF TRIANGLE CENTERS X(125)”. faculty.evansville.edu. 2024年3月26日閲覧。
  6. ^ Weisstein, Eric W.. “Polar Triangle” (英語). mathworld.wolfram.com. 2024年3月28日閲覧。
  7. ^ Weisstein, Eric W.. “Chasles's Polar Triangle Theorem” (英語). mathworld.wolfram.com. 2024年6月21日閲覧。
  8. ^ Weisstein, Eric W.. “Brianchon Point” (英語). mathworld.wolfram.com. 2024年4月6日閲覧。

外部リンク

  • Circumconic at MathWorld
  • Inconic at MathWorld