深さ (環論)

可換およびホモロジー代数において、深さ深度 (depth) は環と加群の重要な不変量である。深さはより一般に定義できるが、考察される最も一般的なケースは可換ネーター局所環上の加群のケースである。この場合、加群の深さはAuslander-Buchsbaum の公式(英語版)によってその射影次元と関係する。深さのより初等的な性質は不等式

d e p t h ( M ) dim ( M ) , {\displaystyle \mathrm {depth} (M)\leq \dim(M),}

である、ただし dim M は加群 Mクルル次元を表す。深さはよい性質をもつ環と加群のクラスを定義するのに使われる。例えばコーエン-マコーレー環と加群で、これは等号が成り立つ。

定義

R を可換ネーター環、IR のイデアル、MIMM に真に含まれるという性質をもつ有限 R-加群とする。このとき MI-深度 (I-depth) は、 Mgrade とも呼ばれるが、

d e p t h I ( M ) = min { i : Ext i ( R / I , M ) 0 } {\displaystyle \mathrm {depth} _{I}(M)=\min\{i:\operatorname {Ext} ^{i}(R/I,M)\neq 0\}}

と定義される。定義によって、環 R の深度は自身の上の加群としてのその深度である。

David Rees による定理によって、深度は正則列の概念を用いて特徴づけることもできる。

定理 (Rees)

R を可換ネーター局所環でその極大イデアル m {\displaystyle {\mathfrak {m}}} とし、M を有限生成 R-加群とする。このとき M のすべての極大正則列 x1,..., xn、ただし各 xi m {\displaystyle {\mathfrak {m}}} に属する、は M m {\displaystyle {\mathfrak {m}}} -深度と同じ長さ n をもつ。

深さと射影次元

可換ネーター局所環上の加群の射影次元と深さは互いに相補的である。これは Auslander–Buchsbaum の公式の内容である。これは基礎理論的に重要であるばかりでなく、加群の深さを計算する効率的な方法を提供してくれる。R を可換ネーター局所環でその極大イデアルを m {\displaystyle {\mathfrak {m}}} とし、M を有限生成 R-加群とする。M の射影次元が有限であれば、Auslander–Buchsbaum の公式が述べているのは

p d R ( M ) + d e p t h ( M ) = d e p t h ( R ) . {\displaystyle \mathrm {pd} _{R}(M)+\mathrm {depth} (M)=\mathrm {depth} (R).}

深さ0の環

可換ネーター局所環 R が深さ 0 をもつこととその極大イデアル m {\displaystyle {\mathfrak {m}}} 素因子であることと同値である。あるいは同じことだが、R の 0 でない元 x が存在して x m = 0 {\displaystyle x{\mathfrak {m}}=0} (すなわち x m {\displaystyle {\mathfrak {m}}} を零化する)。これが意味するのは、本質的に、閉点が埋め込まれた成分(英語版)であるということだ。

例えば、環 k [ x , y ] / ( x 2 , x y ) {\displaystyle k[x,y]/(x^{2},xy)} (ただし k は体)は原点に埋め込まれた二重点をもつ直線 ( x = 0 {\displaystyle x=0} ) を表現するが、原点において深度 0 をもつが次元は 1 である。これはコーエン・マコーレーでない環の例を与える。

参考文献

  • Eisenbud, David (1995), Commutative algebra with a view toward algebraic geometry, Graduate Texts in Mathematics, 150, Berlin, New York: Springer-Verlag, ISBN 978-0-387-94269-8, MR1322960 
  • Winfried Bruns; Jürgen Herzog, Cohen–Macaulay rings. Cambridge Studies in Advanced Mathematics, 39. Cambridge University Press, Cambridge, 1993. xii+403 pp. ISBN 0-521-41068-1