超伝導超大型加速器

SSCの施設(2008年)

超伝導超大型加速器Superconducting Super ColliderSSC)は、1980年代に計画され、アメリカ合衆国テキサス州ワクサハチーの地下に建造される予定であった超大型円形粒子加速器である[1]。しかし、様々な問題が噴出して計画は頓挫した[2]

リング周長は約86.6km(54マイル)という空前の規模であり、円周の内部面積は東京23区に匹敵する[1]。20TeVのビームを正面衝突させて40TeVの超高エネルギーを達成する世界最大の粒子加速器で、建造目的の一つとしてヒッグス粒子の発見が期待されていた[3]

宇宙ステーションヒトゲノム計画と並ぶ巨大科学プロジェクトとして位置づけられ、建造費は当初の見積もりで50-60億ドル[4]、最終的には80億ドル以上に達した[5]。建設にあたっては全米の20州以上が熱心な誘致合戦を繰り広げ、1989年にテキサス州のワクサハチーが選定された[6]。この地はダラス・フォートワース国際空港が近郊にあり、チョーク層の地質で加速器本体を埋めるトンネルを掘りやすいという有利な立地条件にあったのと、テキサス州が最大10億ドルもの資金援助を申し出たことによる[7]

しかし、当初計画の見直しにより経費が大幅に膨れ上がり[8]、資金不足に陥って日本からの資金調達にも失敗した[9]。その他、行政機構と物理学者の内部対立や[10]、超伝導磁石の大量製造の困難など様々なトラブルを抱え込んで、批判が続出した[11]。1992-93年にかけて議会で計画中止案が出され、クリントン政権下で可決された[12]

プロジェクトが中止された時点で、既に建造費の20億ドルが費やされ[2]、トンネルは22.5km(14マイル)が掘り進められていた[13]

外部リンク

  • THE SUPERCONDUCTING SUPER COLLIDER PROJECT - ウェイバックマシン(2012年2月4日アーカイブ分)
  • 山本均「SSC計画中止決定後の米国物理学界」『日本物理学会誌』第49巻第11号、日本物理学会、1994年、929-933頁、doi:10.11316/butsuri1946.49.11.929、ISSN 00290181、NAID 110002066344、OCLC 9656574852、国立国会図書館書誌ID:3901700、2023年8月26日閲覧 
  • 綾部広則「高エネルギー物理 (HEP)―SSC 計画を例として」『科学技術国際協力の現状』第101巻、科学技術政策研究所、2003年、2-50-2-60頁、CRID 1050292572103974272、hdl:11035/1114、NAID 110003734567、OCLC 675344758、国立国会図書館書誌ID:000004305723、2023年8月26日閲覧 
  • 近藤敬比古「SSC計画の経緯と中止について」『国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議 物理作業部会 資料』資料、文部科学省、2015年、1-23頁、CRID 1010000781895839361、doi:10.11316/butsuri1946.52.1.38、NAID 110002077111、OCLC 5171506956、国立国会図書館書誌ID:4104703、2023年8月26日閲覧 
  • 荻津透「超伝導電磁石加速器応用全般」『超伝導電磁石技術』第14巻第2号、高エネルギー加速器セミナー、2022年、1-1-1-19頁、CRID 1130012535429976719、doi:10.50868/pasj.16.4_260、ISSN 13493833、OCLC 9697640267、国立国会図書館書誌ID:028443831、2023年8月26日閲覧 

脚注

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  1. ^ a b 綾部広則 2003, p. 2-50.
  2. ^ a b 山本均 1994, p. 929.
  3. ^ 綾部広則 2003, p. 2-51.
  4. ^ 綾部広則 2003, p. 2-53.
  5. ^ 綾部広則 2003, p. 2-56.
  6. ^ 近藤敬比古 2015, p. 17.
  7. ^ 綾部広則 2003, p. A-9.
  8. ^ 山本均 1994, p. 930.
  9. ^ 近藤敬比古 2015, p. 23.
  10. ^ 山本均 1994, p. 931.
  11. ^ 荻津透 2022, p. 1-7.
  12. ^ 近藤敬比古 2015, p. 4.
  13. ^ 近藤敬比古 2015, p. 20.